030912=奈良の猿沢池で釆女祭 水面行き交う「龍」と「鳳凰」

奈良の猿沢池で釆女祭
 水面行き交う「龍」と「鳳凰」

 中秋の名月の(平成15年9月)十一日、奈良市登大路町の猿沢池で「釆女(釆女)祭」が営まれた。ときおり雨が降り、月は見えなかったが、提灯の明かりが揺れる水面を龍と鳳凰(ほうおう)の形をした船が行き交い、王朝絵巻の世界がよみがえった。
 同池のほとりにある釆女神社にまつられた奈良時代の美女、釆女の霊を慰める祭り。帝の寵愛を受けた釆女が心変わりに苦しみ猿沢池に入水。人々は釆女の霊を慰めるために社を建てたが、池を見るに忍びず、一夜で社が後ろ向きになったという伝承がある。
 祭りはこの日午後五時にスタート。秋の七草で飾られた高さ二メートルの花扇とともに、「花扇使」や稚児ら約二百人がJR奈良駅前から同神社まで練り歩いた。
 神事などの奉納に続き、管弦の音とともに稚児や花扇使を乗せた船が篝火を揺らしながら進むと、あたりは神秘的な雰囲気に包まれていた。

平成15年9月12日(金)産経新聞掲載