けがれ払い無病息災

 大きなたいまつをかついだ鬼が駆け回る伝統行事「だだ押し」は奈良県桜井市の長谷寺で行われ、参拝者らが無病息災を祈る。
 だた押しは同寺の修二会(しゅにえ)を締めくくる行事で、層が鬼を修二会の力で追い払った故事にちなみ、一年の罪をざんげして心身のけがれを払う。
 法要が営まれた後、ほら貝と太鼓の音が鳴り響き、本堂から追い払われた赤、青、緑の三匹の鬼が登場。長さ約四・五メートルのたいまつをかついだ鬼たちは「ウォー」と大声を上げ、火の粉を飛び散らせながら回廊を暴れ回ったが、最後は僧に追われて退散した。

平成15年2月15日(土)産経新聞掲載


女性と仏教

 平安時代、仏教信仰は貴族の中で、女性たちを中心に広まっていく。女性たちがこぞって参拝したのが奈良・長谷寺(桜井市)。本尊の十一面観音に寄せられる信仰は「長谷詣で」という言葉を生んだ。
 清少納言が『枕草子』に参拝の喜びを綴ったほか、『蜻蛉日記』や『更級日記』にも、念願の長谷詣でを果たした女性が興奮を語っている。女が家内を取り仕切るように、寺でも教団でも、仏教の中心部分には女性の姿があった。

平成15年(西暦2003年)3月26日(水)産経新聞夕刊