030831=古い町並みの散策 癒やし効果実証

古い町並みの散策 癒やし効果実証
 奈良で実験 大阪の医師解明


 古い町並みの散策がストレス解消に効果を発揮することを、大阪府立健康科学センター(大阪市東成区)の大平哲也医師が(平成15年8月)三十日までに、実験で明らかにした。九月十九日から奈良県橿原市で開かれる「第二十六回全国町並みゼミ」(全国町並み保存連盟主催)で発表する。
 大平医師はストレス研究の専門家。ストレスがたまると、唾液(だえき)中にストレスホルモンの一つとされるコレチゾールが分泌されることに着目。歩く前後で、それぞれ被験者の唾液を採取して分泌量を測定し、数値の差異を比べた。
 実験は今年(平成15年)六月、同市今井町の「重要伝統的建造物群保存地区」と、その近くを走る国道24号で実施。被験者となる男女三十四人が、国や県が指定する重要文化財もあり、江戸時代からの古い町並みが残る保存地区内と車の往来の激しい国道沿いの歩道を交互に三十分間歩いた。
 その結果、保存地区では、コレチゾール値が下がった人が二十七人に対し、上がった人は七人。一方、国道では、下がった人、上がった火とともに十六人で、変化なしが二人だった。各人のコレチゾール平均値でも、保存地区内では4.6ナノグラム/ミリリットルから3.3へ、1.3も減少したのに対し、国道では4.2から3.8へ0.4しか減らなかった。
 大平医師は「古い町並みを歩けば、心も癒されることが数字で裏付けられた。さらに研究を進めれば、癒やし効果のあるオフィス街、団地を探ることも可能だろう」と話している。 「町並みゼミ」は歴史を大切にしたまちづくりを考える集会。全国の「保存地区」で保存活動を行っている六十八団体を中心に学者や建築家など約四百人が参加する。
 実験結果について、今大会の実行委員、西川禎俊さんは「これまで『保存』にばかり目が向けられがちだったが、これからは『癒やし』という観点から、まちづくりの戦略をたててみたい」と評価している。

平成15年8月31日(日) 産経新聞掲載