030911=広大なサヌカイト採掘坑群、二条山ろく、国内最大級

広大なサヌカイト採掘坑群、二条山ろく、国内最大級
サカイ、平地山遺跡 加工片も大量に

 金属器の伝来まで石器の材料として幅広く利用されていた火成岩の一種、サヌカイトの一大原産地として知られる二上山の北部山ろく地域にある香芝市田尻町のサカイ、平地山の両遺跡で、国内最大級のサヌカイト採掘坑群が見つかり、香芝市教育委員会が(平成15年9月)十日、発表した。縄文時代草創期の原産地石器製造跡も近畿で初めて確認された。

 智弁学園小・中・高等部の新築工事に伴い、今年四月から市教委と県立考古学研究所が本調査を実施。これまでに約六千五百平方メートルを終え、最終的には約一万五千平方メートルに及ぶ。サヌカイト原産地としては国内最大規模の調査。
 サヌカイト採掘坑は数百カ所で見つかり、サヌカイトの石器片も大量に出土した。採掘坑は大きさが一〜五メートル。深さは一〜二メートルが中心でさまざま。
 石器はナイフ形ややじりのほか、やり先などに使う有舌尖頭器(ゆうぜつせんとうき)など縄文時代草創期に特徴的な石器も。それらを作る際に出たらしい石片なども、まとまって見つかったことから、ここで石器を製造していたとみられる。また、弥生式土器も出土。後期石器時代から弥生時代にわたって、ここでサヌカイトの石器製作や採集、採掘が行われていたと考えられる。
 また、採掘坑以外の穴の上で、長さ30.1〜35.2センチメートル、重さ2.8〜3.5キログラム四枚の板状の石材が重ね置いた状態で見つかった。穴には石器片が詰まっていた。保管などのために集落跡でそのような埋納遺構が見つかることはあるが、サヌカイト原産地では例がなく、なぜそのように置いたかは不明。
 市二上博物館の石野博信館長は「二上山ろくの石器生産を知る上でポイントになる調査」、県立橿原考古学研究所の光石鳴巳主任研究員は「縄文草創期は原産地と石器との関係が分かっていなかったが、草創期にも原産地に人が入って石器作りをしていたことが分かった」としている。
 現地説明会は(平成15年9月)十三日午後一時〜同三時。小雨決行だが、荒天時は翌十四日に順延。駐車場はない。当日は近鉄関屋駅から送迎バスを運行する。問い合わせは市二上博物館、電話0745(77)1700。

平成15年9月11日(木)奈良新聞掲載