031120=キトラ古墳 観測機器設置始まる

環境変化を常に監視
キトラ古墳 観測機器設置始まる


 極彩色壁画が見つかった明日香村阿部山のキトラ古墳(国特別史跡)で(平成15年11月)十九日、墳丘の土壌水分などを調べる観測機器の設置が始まった。測定データは奈良市の奈良文化財研究所と東京の文化財研究所にリアルタイムで送信される。
 壁画に悪影響を与える環境変化を監視しようと文化庁が設置を決めた。
 この日は、差し込み式の土壌水分計を墳丘の五カ所に設置。地中温度計は深さを三段階(二.九メートル、一メートル、五〇センチメートル)に変えて三本埋設した。
 作業は二十八日までの予定で、日照計や風向・風速計を調査用の覆い屋に取り付ける。
 文化庁は壁画を保存処理するための発掘調査を決めており、調査研究委員会(座長、藤本強・国学院大教授)を設けて方法や日程を協議している。昭和四十七年に発掘された高松塚古墳では、壁画近くに黒いカビが発生。墳丘を流れる水の変化が密接に関係していた。
 毛利光俊・文化財研究所協力調査官は「石室内の湿度は一〇〇%近く、周辺の水分量を調べることで維持の仕組みが分かる。壁画に危険が及ばないよう、常にチェックする必要がある」と話している。

写真=地中温度計を設置するため、墳丘をボーリングする作業員=19日、明日香村阿部山のキトラ古墳

平成15年11月20日(木)奈良新聞掲載