感染症・がん予防バナナ注目
がんの予防効果が注目されているバナナ。とくに
黒いシュガースポットのあるものが効果が高い。
白血球を活性化・免疫力を高める
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「黒い斑点」効果高い
 バナナが注目されている。帝京大学薬学部の山崎正利教授は、バナナが白血球を活性化
させる働きがあるとの研究結果をまとめ、特に黒い斑点(はんてん)が入ったものほど効果
が高く、その値は、既存の免疫増強剤に匹敵するという。バナナを即臨床応用にというわ
けにはいかないが、感染症やがん予防の観点から注目されそうだ。
 野菜や果物の栄養価はこれまで、ビタミンやミネラルなど栄養素の面から語られること
が多かったが、山崎教授は「栄養素とは別の成分が白血球を活性化させ、免疫力を高める
ことがわかってきた」と話す。
 白血球の活性化はタンパク質の一種である「TNF(腫瘍壊死因子)」を測定すること
で分かる。TNFは白血球の一つマクロファージ細胞がしっかりしているかどうかを示す
指標で、マクロファージ細胞がしっかりしていれば、体の免疫機能が正常に働いているこ
とを示す。
 山崎教授はミカン、グレープフルーツ、イチゴ、バナナ、リンゴ、カキなど10品目の
果汁をマウスに注射、その後、TNFが体内でどの程度作られるかを測った。その結果、
@バナナAスイカBパイナップルの順で、TNFを作り出す効果が高いことが分かった。
かんきつ系の果物はヘルシーなイメージがあるが、免疫機能の面からみると効果は低かっ
た。
 実験では、果汁のpH(酸性、アルカリ性の度合いを示す数字)を血液に血液に近い程
度に調整、減菌して、1匹に0.1ミリリットルを注射した。これは、人間の体重に換算す
るとバナナジュース100CCにあたる。果汁を与えた3時間後に、マウスがTNFを産生
するよう、例えば感染症を受けたような刺激を与えて血液を採取、血液中のTNFを値を
測定した。
 その結果、生理食塩水を与えた場合は、TNFの活性の度合いは1ミリリットルあたり
20ユニットだったのに対して、バナナでは1,800ユニットと100倍近い効果があった。ス
イカ、パイナップルがこれに続いたが、いずれも数値は1,000ユニットに満たず、バナナ
の免疫効果が際立っていた。
 次に白血球の一種である「好中球(顆粒球)」の数を調べたところ、バナナ、リンゴ、
キウイの順に接種した後で数が増え、中でもバナナの増加が際立っていた。山崎教授は「数
値だけ見れば、がんの治療に使われる免疫増強剤と同じ高さ。これだけの数値が出たこと
は驚きだ」という。
 また、過酸化脂質の産生を抑え、動脈硬化などを防ぎ、発がん予防にもなるとして注目
されているポリフェノールは、キウイが1ミリリットルあたり1,200マイクログラム、バ
ナナが同1,115マイクロラムに上がった。山崎教授の調査では、ポリフェノールが高いこ
とから注目されている赤ワインで1,734マイクログラム、緑茶は1,488マイクログラムだ
ったことから、バナナはこの点でも見劣りしない。
 なかでも黒い斑点(シュガースポット)が出て、よく熟したものほどポリフェノールの
含有量も好中球の活性化作用も高かった。
 山崎教授は、「こうした実験結果がイコール、がんを予防するかどうかは定かではない
が、これまでに植物由来で免疫を増強するがんの薬はなく、バナナから新薬が作れるとし
たらおもしろい。野菜では栄養価が高いとして緑黄色野菜がもてはやされているが、食理
学の立場からみると、ナスやキャベツなどの淡色野菜の方がTNFの産生誘導能力が高く
野菜の良さは従来の栄養素だけではとらえきれない」と話している。
 
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